事件で学ぶ!不動産投資
甘い話から得る教訓は!?
皆さん、2018年頃に起きた「かぼちゃの馬車事件」をご存知でしょうか?
この「かぼちゃの馬車事件」は、不動産投資にまつわる事件ですが、不動産会社だけでなく、銀行と建設会社が手を組み、多くの投資家を陥れたため、大きな社会問題となりました
今回は、事例で学ぶ資産運用と題して、
- かぼちゃの馬車とは?
- 事件の概要や手口、問題点は?
- 事件後のオーナーの末路は?
- 不動産投資をするうえでの注意点は?
などについて、解説していきます
不動産投資で、被害にあうのはもちろん投資家です
これから不動産投資を行う人は、「かぼちゃの馬車事件」を一つの教訓として知っておきましょう
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かぼちゃの馬車とは、女性専用シェアハウスのブランド名
かぼちゃの馬車とは、株式会社スマートデイズ(2018年6月20日に破産手続き)という会社が行っていた女性専用シェアハウスのブランド名です
スマートデイズは、不動産投資家(オーナー)に「かぼちゃの馬車」の建築の話を持ちかけ、その後、建てられたシェアハウスをサブリースするという事業を行っていました
実際の物件例は以下の通りで、主に地方から上京する女性をターゲットに販売されており、
- 家賃;約7万円
- 築年数;5年以内
- 駅から徒歩10分
- 個室には、ベッド・冷蔵庫を完備
- 共用部には、キッチン・シャワー・トイレ・洗濯乾燥機を完備
となり、主に地方から上京する女性をターゲットに販売されていました
一見悪くなさそうな物件ですが、実際は、「個室が5畳未満」であったり、「共用スペースも狭い」などの状態で、相場よりかなり割高な家賃だったようです
そして、この「かぼちゃの馬車」は、都内を中心に845棟・約700名のオーナーに「サブリース契約」の不動産投資商品として、販売されていました
自己破産者が増えた異常なビジネス
ここからは、「かぼちゃの馬車」のビジネスを紐解いていきます
「かぼちゃの馬車」は、
- オーナーが、銀行(スルガ銀行)から、多額の融資を受ける
- オーナーは、融資金で、土地と物件を購入
- 建築会社が、不動産会社(スマートデイズ)に謝礼金を支払う
- 不動産会社(スマートデイズ)が、オーナーから物件を一括で借り上げ
- 不動産会社(スマートデイズ)は、物件を賃貸し、入居者から家賃回収
- オーナーは、不動産会社(スマートデイズ)から、サブリース賃料を受け取る
- サブリース賃料を銀行の融資の返済に充てる
といったビジネスモデルであり、5〜7を繰り返すことで、入居者から継続的に収入を得ることができるというものです
ここまでであれば、一般的な不動産投資の範疇に思われるかもしれませんが
- オーナーが、相場の約2倍の建築費を支払わされていた
- 高額な工事費を支払わせるために、スルガ銀行が不正融資を実行していた
という2つの問題点がありました
その1|相場の約2倍の建築費
先ほどふれたように、スマートデイズでは、建築会社からより多くの謝礼金を得るため、
- 相場の約2倍の建築費でオーナーに物件を販売
- 通常より非常に高いキックバック料率の設定
といったことをしていました
例えば、1棟あたり5,000万円の物件だったとしても1億円で販売されるということです
物件価格が上がれば上がるほど、オーナーの融資の返済額も膨れ上がるということは言わずもがなです
また、通常のキックバック料率は、建築費の2〜3%ですが、スマートデイズでは、建築費の50%の謝礼金を受け取っていたようです
「かぼちゃの馬車」のサブリースは赤字事業であったと言われており、実際の儲けは建物の請負工事会社からの謝礼金でした
くわえて、謝礼金で得た資金は、不足していたサブリース賃料の補填にも充てられていました
つまり、このビジネスモデルを成り立たせるには、建築会社からの謝礼金を貰い続けることが不可欠であり、そのためには新しい物件を建て続けなければいけません
しかしながら、2017年10月ごろにはサブリース賃料の支払いが滞るとともに、銀行からの新規顧客への融資が打ち切られてしまいます
結果、2018年5月に東京地方裁判所によって、スマートデイズの破産手続きを開始することが決定しました
「かぼちゃの馬車事件」について、調べると「サブリース契約」が悪いと思われがちですが、そもそもの諸悪の根源は別のところにあったということは知っておく必要があります
その2|スルガ銀行の不正融資
問題の2つ目として、スルガ銀行の不正融資もありました
スルガ銀行は、
- スマートデイズによる、オーナーの資産状況の改ざん黙認
- 通常、組めないような不正な高額融資を実行
という、通常ではありえない融資を実行することで、「かぼちゃの馬車事件」を後押ししていました
前段でふれた、「かぼちゃの馬車」の建築費が高くなれば、銀行にとっては融資額が増え、大きな利益を生みます
この美味しい話に乗ったのがスルガ銀行であり、かぼちゃの馬車案件を甘い審査でどんどん不正融資をし、融資額を大きく増やしていきました
とはいえ、融資とはあくまで借金であり、この借金を返すのはあくまでオーナーです
これにより、不動産経験が浅く、知識が乏しいオーナーを中心に、通常の金額以上の借金を背負わされることになったというわけです
事件の流れとその後の影響
「かぼちゃの馬車」事業の問題点は、前段でふれていますが、大きな社会問題となった事件はどのようにして起こり、その後社会にどのような影響を与えたのでしょうか?
その1|事件の流れ
「かぼちゃの馬車事件」は、
- 相場に比べて家賃が高く、入居者が集まらない(入居率40%)
- 十分な家賃回収ができず、オーナーへのサブリース賃料が不足
- 建設会社からの謝礼金で、サブリース賃料を補填
- 新規オーナーへの融資が打ち切られ、謝礼金がなくなる
- サブリース賃料が払えず、スマートデイズは破産
- オーナーは銀行への返済が滞り、中には自己破産者も発生
の流れで発生しました
実は、借地借家法というものがあり、「借主であるスマートデイズは、いつでも建物オーナーに対し、家賃減額の要求」をすることができました
実際、アパートなどのサブリース会社は、空室が発生したら家賃を下げることで、入居率を高めることができるため、ほぼノーリスクで事業を行っています
スマートデイズも、シェアハウスの入居率が下がった時に、オーナーに対し家賃減額交渉をしておけば、サブリース事業で赤字になることはなかったと思います
しかしながら、それ以上に建設会社からの高い謝礼金が美味しかったため、例え赤字だったとしても高い家賃支払い実績を作って、他のオーナーに実績をちらつかせ、次々に新築のシェアハウスを建てる営業をしていたのでしょう
とはいえ、結局、管理棟数が増えたことでサブリースの赤字も膨らみ、スマートデイズが破産することになってしまったのでは、元々子もありません
その2|行政処分など 事件のその後
スマトーデイズは2018年6月20日に破産しましたが、スルガ銀行やオーナーはどうなったのでしょうか?
スルガ銀行には、この事件を問題視した金融庁が、
- 2018年4月;立入検査
- 2018年10月;行政処分
といった措置を取っています
スルガ銀行は、あくまでスマートデイズ側の立場なので、行政処分は然るべき措置と考えられますが、今回、大きな被害を被ったオーナーはどうなったのでしょうか?
「かぼちゃの馬車」のオーナーの中には、スマートデイズからの賃料が滞ったことにより、銀行への返済ができなくなり、自己破産する人が発生しました
これに対処するため、スルガ銀行では、返済猶予という救済措置を取りましたが、元々相場の倍近い金額で購入されているため、
- 十分な収入がなく、長期間の返済負担
- 売却してもローンが残る
という問題が残りました
最終的には、2020年3月にスルガ銀行とオーナー達による被害弁護団は、「オーナーが「かぼちゃの馬車」の土地と建物を手放せば、ローンの借金を帳消しにする」といった内容で合意しました
その結果、スルガ銀行は、総額440億円の賠償金を負担することになりました
事件の教訓|甘い話には要注意!
「かぼちゃの馬車事件」から得られる教訓は、「甘い話には要注意!」につきます
具体的には、
- サブリース契約は家賃保証なので安心です
- 融資は受けられます
の2点でしょう
サブリース契約自体は、管理の手間を省くことができ、安定した収入を得られるため、完全悪というわけではありませんが、
- サブリース賃料は、家賃から手数料を差し引いた金額になる
- 借地借家法により家賃が引き下げられる可能性が高い
ため、注意が必要です
また、家賃保証は魅力的に映るかもしれませんが、サブリース会社が倒産すれば、大きなリスクを抱えることも肝に命じておきましょう
くわえて、「銀行が融資をしてくれる=オーナーの味方・投資を応援してくれている」というわけではありません
そして、銀行はあくまで融資をすることで、収益を生み出すことがビジネスの1つです
つまり、銀行は、オーナー側ではなく、不動産会社や建設会社、そして管理会社側にいるということは押さえておきましょう
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